低温調理と食の安全:何度なら安全なのか?

低温調理に目覚めていろいろやるようになって随分経ちますが、自分の中で一つはっきりしないものがあります。それは食の安全に関して。細菌、ウイルスなどの問題はないのかどうか。

たとえばサルモネラ菌はこういう温度との関係があるとのこと。

0-8度  増殖しないが死なない
8-15度 徐々に増殖する
15-30度 かなり増殖する
30-38度 激しく増殖する   ← ここがピーク
38-40度 かなり増殖する
40-60度 徐々に増殖する   ← よく使う温度
60度以上  5-10分で死滅する
100度   数秒で死滅する

ただし、菌と言ってもいろいろいるわけで、非常に怖いボツリヌス菌は100度でも死滅しない(だから亜硝酸塩などをハムに使う)。そして低温調理でよく使う温度帯は上のリストを見ても「徐々に増殖する」40-60度ですから、結構危ないと言えるはず。ですから「完璧」を狙うなら火の入れ方はウェルダン、あるいは高温で煮こむしかなくなりますね。

ところが我々は刺し身も食べれば牛のたたき、血の滴るようなレアのステーキを食べるし、そういう食べ物を提供する店はいくらでもある。

これってどういうことなんでしょうかね。

考えてもわからないことを「自己責任で・・」と書いて終わらせるのが多くのブログの傾向ですが、でもそれじゃやっぱり駄目だと思うんですよ。子供だって年寄りだっていますし、自分だってギャンブルをしながら食べたいとは思いませんもの。

だからやっぱりある程度のことは知りたいし、危険と常に一緒という状態からは脱皮したい。

我々の一番の問題点は、

◯ 素性がわからない素材を使う

ってことだろうと思っています。実は私の実家は飲食店をやっていまして、私もそこで育ちましたからある程度のことは知っているし、「常識」ってのがあるんですね。また仕入れもちゃんとしたところから仕入れるわけで、スーパーの特売、なんだかわからないけれどメチャ安で売っているものを使うわけじゃない。でもこの「信用」の上に成り立つ安全って、海外に出たら何の意味もないんですね。

そもそも「生食」を想定していないものばかりですから。

困りましたねぇ。

でもどんなに頑張っても安全なもの、信用できるものを手に入れることは出来ないし、結局は「ギャンブル」であると考えないと駄目だと思うんです。でも出来る限り「負けない」ようにするしかない。

低温調理で肉を調理する場合、私の場合は55度~65度が多く、特に牛肉は55-58です。つまり、菌は死滅しないどころか「徐々に繁殖する」温度帯で、数時間から10時間以上もその温度に晒すということは「菌を増やしている」ことになる。これって「刺し身」で食べるより危険のはず。

まずそれが実態であると認識するところからスタートするべきだと自分に言い聞かせています。

でも肉で言うと「菌は肉の内部にはいない」のが普通だということ。これが唯一の救いかもしれませんね。もちろん古くて常温で何時間も放置されたような肉は別にして、そこそこの店から買ったそこそこの肉はだいじょうぶであろうと考えるしか無い。でも肉の表面には「必ず菌は付いている」んですね。何の菌というより雑菌がいろいろいるはず。

そこから考えれば

◯ 肉の扱いに注意する。まな板や包丁。
◯ 表面は「必ず」殺菌する。

これだけで随分違うはず。日本では牛のユッケは生食用の肉しか使えないことになりましたが、生食用の肉は流通していないんだそうですね。ただ、生食用に外側をトリミングして肉の塊の「中」を食べる。またステーキの場合の「レア」で普通に出されるのも同じ理由。

つまり

◯ 肉の塊を使うべき。薄切り、ミンチ、細切れ、サイコロステーキ、圧着肉には危険性がある。

ってことじゃないでしょうか。まぁ、低温調理で薄切り肉やミンチ、サイコロステーキを使うことはまずありませんから、表面の殺菌と肉の扱いだけ注意していればかなり危険は減るはず。

具体的には、低温調理をする前に表面を焼くとか、まずは熱湯の中に数十秒浸けるとか、湯通しや熱湯を掛けるだけでも何もしないよりは良いと思います。私の場合は面倒なことは嫌いなので、低温調理するべくパックした状態で高温のお湯に浸けるようにしています。ただし、前に何度も書いていますが、低温調理は密封調理(真空調理)でもありますから、最初にしっかり焦げ目をつけると、その味が全体に回り過ぎちゃうということも忘れてはならないと思います。

そしてまな板や包丁、台布巾の衛生管理。

これは低温調理にかぎらず「食の安全の基本」ですし、ちゃんと考えるべきですよね。飲食店の経験がある人なら(バイトでも)、かなりここは拘るべきポイントだというのがわかるはずで、意外と家庭の中では疎かにされている傾向があるんじゃないでしょうか。普通に買ってきたものを普通に調理して「食あたり」になったことなどないのが普通でしょうから。

でも低温調理をする場合は「菌が徐々に増殖する温度」で「長時間」調理するのを忘れてはならないと思います。菌がいれば「確実に増えている」と考えたほうが良いと思っています。

しかしこうやって考えてみますと、世界中にある昔からの調理法って理にかなっていますよね。オーブン料理なんかまさにそれで、あんな高温の中に入れるんですから、表面に付いている菌は簡単に死滅するんでしょう。また私の大好きな「蒸鶏」ですが、実際には蒸さずに茹でる事が多いとのことで、これもまた最初に熱湯に入れるのが普通。

そういう意味での低温調理の安全性って非常に低いと考えるべきで、「狙った芯温」そのもので調理しますから、表面に必ず付いているであろう細菌は生き延びる。(笑)

下手をすれば、それを増やすことをしている。(笑)

ただ、ネットの中を調べてみますと、何度の温度なら安全なのか?ということに関して、明確な書き方をしている人は非常に少ないんですね。多くは「自己責任で・・」でウヤムヤにしていますし、はっきり書いている人もいますが、きっとそういう方々は学校や病院の「給食」のような経験がある人のようです。つまりかなり「安全度が高い調理」の経験者で、また厚生省の指導もあるんでしょう「63度で3分間」「75度で1分以上」とかそういう考え方なんですね。これはオーブン料理でもよく言われている温度のようで、「芯温が63度になればOK」みたいな記述をよく見ます。

でも低温調理にこだわっている人はもうお分かりだと思いますが、63度って低温じゃなくて「高温」の部類なんですよね。(笑)

でも上に書いたように、もし塊肉を使わないとしたらこういう基準でやらないと危ないと思います。例えばハンバーグとか。ミンチの場合は肉も菌も混ざっていると考えるべきですし、薄切り肉のシャブシャブにしても決して低温調理のような低い温度でシャブシャブする人はいない。やっぱりみんな意識しなくてもちゃんと理にかなったことをやっているんですね。

でも低温調理は新しい考え方ですし、今までの常識は通用しないと思ったほうが安全なはず。

まぁ、牛肉に関しては素材の選び方、扱い方、表面の殺菌で随分安全になるんじゃないかとは思っていますが、私の気になるのは鶏肉なんです。

鶏肉の場合はカンピロバクターという菌が多いとのことですが、これはほぼ間違いなく付いていると思って良いくらい多いとのこと。だからこそ鶏肉の刺し身やレアって一般的じゃないし、そういう背景があるんでしょうが、じゃぁ最初に表面だけ焼こうとか熱湯に入れて・・ってやり方だと低温調理にならないんですね。すぐ火が通ってしまいますから。

ただ1つの救いは、鶏の場合の低温調理って牛肉とは違ってかなり温度が高いってこと。牛肉で調度良い55-57度辺りの温度で鶏肉を調理しますと、「生だ~~~~」と誰しもが思うはず。(笑)

最低でも胸肉の場合で60度。腿肉や皮なんて60度でも気持ちが悪い出来上がりになるはず。実は今も鶏ももを低温調理中ですが、普通一般より低い温度を使う傾向がある私でさえ67度です。この温度で90分程度低温調理しますからかなり安全だと思ってはいます。

でもネットの中には「鶏ハム」を作る人は結構いて、中には60度がベストと書いている人もいて、私には胸肉なら60度でも良いですが、腿肉だと低すぎると感じます。でもベストだと言われればどうしてもやりたくなります。(笑)

でもその時に衛生管理はどうする?

わかりませんよねぇ。ですから「自己責任で・・・」ってなるんでしょう。でももしそれがほんとうに美味しいのなら飲食店だってやるはずで、飲食店は「自己責任で・・」と客には言えませんからどうするんでしょうか。

我々は飲食店ではありませんが、飲食店のつもりで考えてみることは大事だと思っています。

熱湯に短時間だけ浸けるのも良いのですが、皮は一気に縮まりますから、皮付きだと駄目なのね。

私の場合、最初に熱湯消毒をする場合、【鶏肉は】80度ぐらいのお湯につけるという方法でやっています。で、ちょっと時間は長め。でもせいぜい1分。

こういう細かいことを書き始めるとキリがないのですが、でも低温調理の場合は、いつも以上に安全には気をつけるべきだと思いますし、自分だけで食べるならまだしも、小さな子どもや年寄りがいたら大変なことになりますし、また友人が遊びに来た時、パーティーでそういうものを出して、たった一人でも下痢するようなことがあったら一生言われちゃいますもんね(笑)。そしてそんなことが一度でもあると、こんなにおもしろい低温調理をやめようなんて方向で考えるようになってしまうかもしれない。

私はこれからも低温調理で楽しみたいと思うからこそ、衛生管理には気を使おうと思っています。

殺菌に関してはここが簡単明瞭だと思います。スチコンは低温調理が出来る調理器具ですから、スチコンの流れで調べて行ったらいろいろわかるかもですね。

達人講座 | スチコン | 2.基礎知識 | 電化厨房ドットコム

kanetsu_zu

やっぱり我々ができることは

◯ 内部には菌はいないという前提で
◯ 外側をちゃんと殺菌する
◯ まな板、包丁、手、台布巾などの衛生管理をきっちりする

ぐらいなんでしょうね。

殺菌ではなくて、本来どんな温度でどのくらいの時間、低温調理すればよいのかですが、厚生省が面白い指針を出しています。

食肉製品の生産業者が守らなければならない基準はいろいろあるわけですが、その中の調理温度に関する基準です。これを見れば、どんな感じで低温調理をすればよいのか指針が見えてくるはず。

「非加熱食肉製品」(火を入れずに食べる肉製品)を製造するときの温度。でもこれは「この温度と時間で殺菌できる」という意味ではありません。でも「安全」の見地からこの基準を設けているはず。

2015-05-19_23h06_07


厚生労働省の出している食肉製品製造に関するPDF。画像をクリックすれば表示されます。



 
 
 

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低温調理と食の安全:何度なら安全なのか?” への2件のコメント

  1. 菌は真空状態(近い状態)では、増殖が出来ません。
    低温調理を行う際に、真空状態にすると思います。
    なので、低温調理で長時間放置(1時間程度なら)していても
    菌の増殖はほとんど無いと考えられます。

    生や加熱前問わず、真空状態では長期保存可能なのは知ってることですよね?

    • 大事なポイントは「殺菌」です。

      低温調理は真空調理からの流れで密封調理でもありますが、真空と言いつつ実際には真空にはなっていないのが普通じゃないですかね。真空パック機を使っても業務用のような強い負圧が掛かるわけじゃありませんから。また、低温調理は必ずしも密封調理ではないわけです。空気が触れる状態での低温調理もやりますから。

      また「真空パック」でも菌の増殖の恐れがあるというのが厚生省の立場ですし、一般的には低温調理では「菌の増殖&殺菌に留意する」のは世界的なコンセンサスです。増殖の一点だけを見ているわけにはいかない。

      つまりですね、真空状態では増殖できないとしても、調理前、調理後もふくめて調理なわけで、「殺菌」の概念を持たないと危ないってことでしょう。ですから「温度」「時間」そして「素材の扱い」には慎重になるべきであって、「低温調理時に増殖するかしないか」は一つの項目でしか無いってことですね。

      だから給食や病院食にしても、調理温度は細かい規定があるんでしょう。肉加工品も同じで「真空調理なら構わない」とはなっていない。ポイントは「菌の増殖」ではなくて「殺菌」。

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