調理の化学

いろいろ調理実験をしていると、そりゃもちろん美味しいものを食べたい、食べたことがないものも作ってみたいと欲望は広がっていくわけですが、やっぱりオヤジの趣味としては「料理の科学的根拠」を知りたいと思うんです。

料理の世界って、親方にこう教わったとか、我が家ではこうだとか、あるいは料理番組を見ても「沸騰させてはいけない」とかいろいろ言うわけですが、これって今の時代変だと思うことが多くあります。いわゆる経験則に従った世界でそれを皆がアタリマエのことのように喋ってる。でもどうしてそうしなくてはならないかの根拠って聞いたことがない。疑い深い私は「ほんとかよ?」と思うわけで、子供の頃から「どうして?どうして?」と聞く五月蝿いやつでしたから、どうも料理の世界って遅れてるというか非科学的というか、「皆がこういうのだからこれでいいのっ!」みたいに思えるんです。

実際に料理にかぎらず、根拠のない「噂」だけがひとり歩きしていることっていっぱいありますよね。最近このブログに書いているダイエットに関しても糖質制限にしてもそうですが、どうしてそうしなければならないのかってのが大事で、たとえば「茹で卵ダイエットをしたら痩せた」という事実はあってその話は広まるんだけれど、どうしてそれで痩せるのかを言う人ってほとんどいないのね。なんでその理由はなんだろうって気にならないのか私にはそれが不思議でしかたがありません。理由がわからなければ危なくて出来ないはずなんだけどなぁ。

でも理屈がわかってくると「茹で卵ダイエット」はアトキンス式と全く同じで、これも低糖質ダイエットだというのがわかる。では低糖質ダイエットだとどうして痩せるのかの理屈がわかってくれば、自分流のダイエット法も構築できるんですね。またやってはいけないこと、OKなこともわかるようになる。つまり数学で言えば「公式を覚えれば問題は解ける」のと同じ。でも世の中って意外に原始的で「こうやったらこうなった」という表面的なことばかり。

料理の世界に頭を突っ込んでみると、「食べなければ生きていけない」ほど重要なことなのに科学的に知ろうとしても難しい。きっと料理専門の学校に行くと教えているのだろうとは思うのだけれど、その理論は巷には出てこないのね。だから非常にストレスがたまります。ただ単にああしろこうしろと言われ続ける一兵卒の気分。(笑)

それでも低温調理に代表されるように、科学的に考える人達が様々な手法を紹介している部分もあって、当然その理屈も明らかにされているから「公式を覚えればいかようにも応用できる世界」で面白いんですね。

ま、常日頃そんなことを考えながら調理実験をしているわけですが、主にユーチューブの動画で勉強していて、その中でこの人は面白いとファンになった料理人が何人かいます。殆どが「こうしろ」というだけじゃなくて「なぜこうしないとならないのか」を喋りながら教えてくれる人たち。

その内の一人でCookinginRussiaという名の人がいます。彼のユーチューブの番組はここ(クリック)

洋食の料理人ですが、面白いんですよ。同じ料理でも19世紀はこういう調理法だったとか、現代はこうだとか、それも学者じゃないですから手さばきもプロで、また日本の多くの料理番組みたいにゆっくり綺麗に丁寧にやるわけじゃなくてどんどん手早く料理していく姿も面白い。フランス料理なんてスープを取るだけで大きな肉の塊を何時間も煮込んだりするわけですが、でもその肉は料理としては出さない。そういうのを見ると「あの肉はどうするんだろう」なんて思うじゃないですか。すると彼は「昔はこういう肉は窓から投げ捨てたんですよ。すると使用人とか小作人がそれを食べた」とか「ニンニクを使うのはそういう使用人たちの料理だった」とか料理の中に出てくる小さな話も面白い。

私はこの人の動画が楽しみでしょうがないのですが、最近、科学的な話をするようになりました。料理とは別のところで、「知らなければならない基本的なこと」としての化学です。私としては「待ってました~」という感じでワクワクしています。

第一弾は「Boiling and Simmering」。つまり日本で言えば、コトコト煮るとグツグツ煮るの違い。これを分子レベルで何が起きているかの説明を加えながら、なぜそうするべきかを話している。

まぁ、この辺は常識的なところも多く、日本で言えば「どうして昆布やかつお節をグツグツ煮ないのか」みたいなところもあるんですが、その辺を一応科学的に抑えておくのは面白いと思いました。要はなんてことのない、温度が高くなると「香り、味が飛ぶ」ということと「活性化することで他の反応が出てくる(雑味が出る)」ってことなわけですが、この辺の理屈をしっかり覚えておくと、「コトコト煮ないと駄目なもの」と「圧力鍋でも良いもの」あるいは「グツグツ煮ても良い物」の区別がわかるんですね。この場合はこうするんです、なんて一々言われなくても自分でわかるようになる。またコトコト煮るとは温度でいうとどういう温度なのかがはっきりわかれば想像や思い込み、勘違いも減ってくる。(また素材、料理によってコトコト煮るのにもいろいろあるのがわかる)

この辺はまさに経験則で料理人なら知っていることばかりなのでしょうが、料理なんて全く出来ない人でも理屈がわかればどうするべきかがわかるというのは大事な点だと思いました。まさに公式や定理が料理の中にも存在するってことなのね。

ORGANIC CHEMISTRY IN COOKING – Boiling and Simmering /molecular food science

こういうウンチクを聞くのが好きな人には面白いと思います。

私はこういうことをまず覚えるべきだと思っていて、料理って親方に蹴飛ばされながら覚えたり、義母にチクチク文句を言われながら覚えるものじゃないと思うわけです。スポーツの練習が科学的になってきたのと同じで、料理の世界も経験則だけで「頑張れ」「数をこなせ」みたいなものは古いと感じます。

こういうのを知りたい私としてはきっと書物ではいろいろあるのだろうと思いますが、できればネットで簡単に覚えられる方が良いと思うのですが、探してもないんですね。特に日本の番組ってテレビの料理番組の延長みたいなのばかり。でも海外はやっぱり広いと思うのは、前にも紹介しましたが料理教室の実習の場面だけじゃなくて、椅子に座って講義、ウンチクを教えるような動画もかなりあるってこと。

動画ではありませんが、日本発の情報で「これは面白い」と思ったのは前にも紹介しましたが、「関西食文化研究会」(ここをクリック)

料理界の重鎮が出てきて「調理実習」と共に「科学的根拠」をしゃべり、参加者が討論している姿って非常に興味があります。

たとえば「焦げ」ですがこれはメイラード反応、キャラメライズ(砂糖の場合)であるわけですが、それは一体何なのか、どうして大事なのか、そんな事を「科学的」に話しているし、それを知ることが料理人には重要だという考え方が伝わってきます。「理由のないことはするな」「なぜそうするのかわからないことはするな」という基本姿勢は我々一般とて同じだと思いました。私は門外漢ではありますが、こういうイベントに是非出てみたいと思ったくらい。

イベント レポート/メイラード反応とは何か? ←クリック

最初の基調講演でも良いことを言っています。

川崎寛也(かわさき ひろや)さん

 最初に話したいのは、メイラード反応という、科学の教科書に載っているような用語を、なぜ料理人が理解した方がいいのか、という話です。たとえば、「椅子のデザイン」という場合、デザインはどういうことか。椅子の本質的な意義を考えて、それをプロダクト(製品)化していく。椅子の目的は、座るっていうことですよね。「座る」とは、どういうことかを突き詰めて考えたら、こんな椅子もできますね、あんな椅子もできますね、という意義を本質的にとらえ、それをデザインしていく。料理にも、同じことがいえると思います。

料理人の皆さんは、風味のデザインをやっておられるのです。どんな素材を使って、どういう味付けをしていくか、意識的に、意図的に、こういうおいしいものができるのではないかと、考え、料理する。それが風味のデザインです。昔からやられていることをそのまま行なうだけではなく、その中に意義を見いだし、「おいしさ」とはどういうことかを本質的にとらえるのが、これからの料理だと思っています。
その中で、なぜ科学が重要か。科学は、料理でデザインすることに対して一つのツールを示す。デザインでいうところの絵の具を使うのか、コンピュータを使うのかなど。道具を提供するのが科学の役割かな、と思っています。

このメイラード反応に関することは「低温調理」をやると必ずぶつかる壁ですので、非常に参考になりました。また「焦げ」は「茶色」ですが、醤油やソースも「茶色」。これがどういう意味なのかわかったのは大きな収穫でした。

そして、私がずーっと疑問に思っていた「蒸すこと」と「煮ること」の違いもこの研究会の情報でかなり理解が進みました。

イベントレポート/ 蒸す  ← クリック

基調講演の中にこんな図がありましたが、こんなのを見るだけでもいろいろアイデアが浮かんできます。また料理によっては何故煮るんじゃなくて蒸すべきなのかもわかってくる。(豚の角煮も圧力鍋を使うとイマイチな理由もわかる 笑)

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こういうのを読んでいると「常識のウソ」もわかって面白いです。例えば青物野菜を茹でるときに塩をひとつまみいれますよね。「何故?」と聞くと「色をしっかり残すため」と皆が言いますが、あれはウソなんですってね。昔の塩ならそうなったそうです。不純物も多くいわゆるニガリの成分があって、その中の塩化マグネウムがその役割をしたそうです。でも今の塩には塩化マグネシウムは入っていないので、色をしっかり残すことはできないそうです。ですから本当に色を残したいのなら「ニガリ」を入れろと。逆に、シーソルトを使う料理人が多いのもこれに関係あるんでしょう。

こういうウソが世の中には蔓延していて、料理の世界も同じなのでしょう。

料理と私の好きな写真も共通項があると思っていて、どちらも最終的には「センス」がものをいう。でもどうやって表現するべきかの基本的なことがわからなかったらセンスも形にならないと思うんですよ。センスって個性だと思うのですが、わけわからんものを作って、これが私の個性だなんて通用しませんものねぇ(笑)。自己満足だけで終わらせてしまうのは悲しいし。

私としては、まず「普通のもの」を「普通に作れる」ようになりたいです。そしてもちろん「どうしてそうするのか」を全て理解したい。皆がそうしているから、なんてのは自分で作ったことになりませんもの。ただの真似事。

ネットでこういうウンチクがわかるようなところがあれば是非教えてください。

 

 
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調理の化学” への3件のコメント

  1. これとかダボさんの為に書かれた本だと思うのですが

    「タマネギを弱火で飴色になるまで炒めたら美味しい」といわれて、なぜ「弱火」で「飴色」なのかを考えずにはいられない人たちのためにあるのがこの料理書、だそうです笑

    http://www.amazon.co.jp/Cooking-Geeks-%E2%80%95%E6%96%99%E7%90%86%E3%81%AE%E7%A7%91%E5%AD%A6%E3%81%A8%E5%AE%9F%E8%B7%B5%E3%83%AC%E3%82%B7%E3%83%94-Make-Japan/dp/4873115094

    http://www.amazon.co.jp/%E3%83%9E%E3%82%AE%E3%83%BC-%E3%82%AD%E3%83%83%E3%83%81%E3%83%B3%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%82%B9-%E9%A3%9F%E6%9D%90%E3%81%8B%E3%82%89%E9%A3%9F%E5%8D%93%E3%81%BE%E3%81%A7-Harold-McGee/dp/4320061608

  2. 上の本の目次です。

    この本欲しー!

    第一章「ハロー、キッチン!」は本書の考え方
    第二章「キッチンの初期化」は基本ツールとその使い方
    第三章「入力の選択:風味
    と食材」は味覚の基本メカニズム
    第四章「時間と温度:料理の主要変数」は加熱の仕組みと各素材の変性
    第五章「空気:焼き菓子作りの重要変数」は菓子に使う小麦粉や卵の性質
    第六章「食品添加物の使い方」は調味料と添加物の仕組み
    第七章「ハードウェアで遊ぶ」は真空調理や低温調理

    • ご紹介頂いた書籍ですが面白そうですね~~~。読んでみたいです。

      ただですね、問題があるんですよ。

      私は最近目が結構やられていまして、本を読むのが辛いんです。今も日本から取り寄せて積んだままになっている本もあるくらいで・・。(笑)

      だからやっぱりネットになるんですね。動画ならベスト。

      日本だと本文にも紹介した「関西食文化研究会」が非常に面白くて、和食、中華、洋食の重鎮たちがそれぞれ自分の分野での考え方、あるべき姿も開陳してくれるので「理論理屈」だけじゃなくて面白いんですね。

      また海外に目を向けますと、調理師養成講座の動画が結構あって、科学的なアプローチ(講義)とともに実習があって実践のノウハウがわかって面白いんです。

      でも日本ではそういう動画がないのね。だから是非、知りたいのですが、もしかしたら、日本って「理論と実践」の両建ててやっているところは少ないんじゃないか、そんな気がしています。またあったにしてもそれをユーチューブに出すなんてこともないのか、とか。

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