角煮を科学する

もう何年も何年も美味しい角煮を作ることに挑戦しているのですが、角煮って本当に難しくて、思ったようなのが出来ません。日本にいる頃にはそこそこの物が出来ていたので、きっと豚そのものが違うのかもしれません。こちらの板前に聞いてもそれを言いますし。そして実際に、こちらで美味しい角煮を食べたこともありません。

でも豚によってそんなに違いがあるんでしょうか。

そりゃ味とか脂の乗り方とか大きな違いはあるんでしょうが、角煮の料理法を考えた時に、調理の仕方そのものに問題があるような気がしてしかたがないんです。日本ではどうにかなっていたのは豚が違うのが理由かもしれませんが、でもこちらの豚でもどうにかできるような気がするんです。というのは、料理は科学だと考えるようになってから、自分が今まで知っていたこと、やってきたことはかなりいい加減であるのがわかったから。

特に角煮ですが、日本なら圧力鍋でもどうにかなっていたのが、こちらでは全く駄目なんですよ。どうしても繊維の固さが残って、箸で持てないくらい柔らかくするなんてことは不可能。でも科学的な根拠を知ると、そもそも圧力鍋で角煮を作ること自体間違えているのがわかります。圧力が掛かると中は120度程度になりますし、肉をその温度にさらしたらどうなるかは簡単にわかる。

圧力鍋がどうしようもないって言っているのではなくて、圧力鍋は我が友で、これがないと私は非常に困るんですが、圧力鍋ってそもそも何をする調理器具なのかを考えると、具材から味を出すのに何よりも長けている器具であって、それぞれの味を残したい調理は不得手なんですね。また形を残したい調理にも向かない。だから圧力鍋で煮る場合は、大きめに切ったりするわけですが、そもそも圧力鍋は水から煮出してスープを取るのが本業なんでしょう。で、具材は味が抜けてしまう。ところがその後、また味を吸い込むんですね。だから美味しいと感じる煮物が出来る。でも出来上がったものって、二日目のオデンみたいなもので、美味しいんだけれど、何を食べても同じ味になるのね。

圧力鍋の中の肉は、一度柔らかくなって、そして一気に収縮して硬くなり水分も旨味も放出、そして肉の繊維をしっかり結びつけているコラーゲンが分解してゼラチンとなりまた柔らかくなる。これに一度出た味がまた染みこんで美味しい煮物となるわけだけれど、角煮の場合はそうはならないのね。多分、調理時間が結構微妙なのかもしれないけれど、タンパク質を繋いでいるコラーゲンがゼラチンとなり、それが溶解して抜け出てしまい、繊維が残ってパサパサになるなんてことが起きる。でもしっかり煮こまないと脂が抜けないというジレンマがある。

つまり、角煮が難しいのは、肉を固くせずに、脂はしっかり抜くけれど、ゼラチンは溶け出さないようにその場に残さなければならないってところで、それさえ出来ればあとは味付けをするだけで完璧な角煮になる。

そんなことが出来るのか?それを科学的にどうあるべきか調べているんですが、そこまで分析している学者も調理人もいないのか、ネット上ではどう探しても答えは見つからず。

圧力鍋では脂をしっかり抜こうとするとゼラチンも抜けてしまうわけで、そして味も抜けてしまうから、角煮では常識の煮こぼしなんてことをしたら何をしているのかわからなくなるのね。そして残るのはパサパサの繊維状の肉で、味もしっかり抜けた豚肉。だから圧力鍋を使うとしたら、溶けた脂は捨てるにしても汁を捨てたら駄目だというのがわかる。また味付けは最後の最後にやるべきで、特に塩、あるいは塩が入っている醤油は最後に使わないと肉が固くなる。

今、フト思い出したのが、クアラルンプールにある角煮が美味しいという客家レストラン。私は楽しみにしていたんですが、そこで出てきた角煮はいわゆる圧力鍋で作ったような角煮。残念でした。味が独特だし、雰囲気が雰囲気だから美味しいような気がするけれど、ああいう角煮を日本で出したらブーイングかもしれない。やっぱり豚が違うのかなぁ。

私が何を狙っているのかというと、まず脂を抜くのは難しくないのね。これはためしてガッテンでやっていた、油で焼いて油を溶かすという考え方にちょっとにているのだけれど、コンフィで良いと思うんです。実はコンフィでバラ肉を長時間煮込んだことがあるのですが、これの出来が最悪で、脂が抜けすぎてパサパサ。圧力鍋より酷い出来上がりでした。でもその時は温度が高すぎたのと時間が長すぎたのが理由だと今思うわけで、脂を抜くには油を使うのがベストなのは間違いがなし。油で煮たら恐ろしいことになりそうだけれど、実は逆で、脂は油に溶けやすいからどんどん抜けちゃうのね。で、パサパサになったり。

ただ、私みたいに凝り性の素人料理人もいて、コンフィをすると脂も抜けるけれど味(というか香りか)も抜けるのを、お湯で煮るのと併用した実験レポートも見つけました。

じゃ、だめじゃん。(笑)

だからコンフィって煮た油も美味しいと、油も一緒に食べるんですね。煮物の汁を捨てずに食べるのと同じ理屈。水で煮ればもちろん味は水に出てしまうのだけれど、その汁は利用できるわけだからそれで良いのかもしれない。

つまり、突き詰めていくと、やっぱり水で煮るしか無いのかと思うわけです。で、豚バラの脂の溶解温度はかなり低い(36度から46度程度)ので、低温調理でしっかり時間を掛ければうまい具合に行くかもしれない。つまり肉が変性し収縮して水分(旨味も)を出してしまう温度(65-68度)の手前(60度前後?)で長時間調理し、脂は抜こうという作戦。で、脂も煮汁も捨てる。(ちなみに馬刺しが美味しく感じるのは融点が低くて口の中で溶けるから)

そしてそれで出来たバラ肉を素材として、柔らかく煮る作業に移る。これはコラーゲンが分解してゼラチンになる温度を維持。温度は高めってことですね。私はこの作業はもしかしたら蒸すのが良いんじゃないかと思っています。それの根拠ってないんですが、そもそも角煮は蒸し物だというプロが多いですので、ここに何かの答えがあるのかもしれません。だったら最初から蒸しちゃえば?となりますが、では温度は?この大事なところをちゃんと書いている料理人っていないんですね。蒸すと言っても100度で蒸すのか、65度で蒸すのかで、出来上がりはまるで違うのに、何度で蒸すのか書いてくれないとまったくわからないし、何も書いていないのと同じやんか。茶碗蒸しだってそうで、ただ蒸したら普通は必ず失敗するでしょ。

ここでまた迷路に入ってしまった私ですが、ネットで面白い素人調理人を見つけました。安全ちゃんという変なHNの可愛い女性。でも彼女の書き込みで、この女性はかなりの凝り性で、ちゃんと自分で実験し検証するタイプなのが良くわかりました。私が悩んでいるのと同じ道をあるいて、そして彼女は納得の行く角煮を作るのに成功した。で、彼女の方法は蒸すこと。

彼女は二度蒸しをしていて、味付けは最後で、考え方は私と全く同じなんだけれど、蒸す温度が書いていない。だから全く同じようにやっても、同じ結果は出ない可能性が高いんですね。ただ、「湯気が出るぎりぎりの温度で」と書いてあるので、温度は70度位かもしれない。それで二時間蒸して、出た脂も汁も捨て、また一時間蒸す。この時に投入するのは酒、砂糖のみ。一時間後に醤油を入れて5分後に火を止める。なるほどですよね。彼女はちゃんと理屈を考えている。

この安全ちゃんってちょっと変わった女性なんだけれど、他の彼女の料理レシピを見ても、彼女がいかに真剣に考えて悩んだ上に作り上げたレシピかというのが全く門外漢の私にも伝わってきます。

なんだかこの女性が気に入ってしまったので、まずは彼女の教え通りにやってみるかな。(笑)

安全ちゃんの角煮のページ   ← クリック

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角煮を科学する” への3件のコメント

  1. こんにちは

    いつも楽しく読ませてもらっています。

    違ってるかもしれませんが、水の質が日本と違うからかもしれませんね。

    そちらの 硬度 や 成分 ってどうなのでしょう?

    一度水を変えてみられてはいかがでしょうか

    • おおおおおおおおお、水ですかぁ。なるほど。全くそこまで気が回りませんでした。

      肉を煮るには硬水がよいとのことですが、そもそもゴールドコーストの水の硬度はどのくらいなのか。こちらには大きなダムがありまして雨水頼りですから軟水かもしれませんね。だとすると・・・・・大量にあるニガリを入れてみるとか?

      硬度の高い水って売っているんだろうか。

      蒸留水とニガリをたっぷり(笑)入れた水道水で、どう違いが出るのか実験してみますね。

      素晴らしいヒントを有難うございます。

  2. ピンバック: 2016年1月24日のご飯 | Lean Life

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